前回の記事で預金連動型住宅ローンについて触れました。改めて2019年現在に提供されている商品を調べてみると、以前とはかなり商品内容が変わっていたため、ネットで調べた情報をまとめてみました。
預金連動型住宅ローンの魅力(威力?)
皆さんは「預金連動型住宅ローン」というものをご存じでしょうか?
ものすごく簡単に言うと、「預金残高分の金利がゼロになる(大幅に優遇される)」という商品です。
つまり、ローン残高3000万円の場合、普通預金に2000万円を入れておくことで2000万円分は優遇金利、1000万円分に金利が掛かる、という商品です。
ローン残高全額分の預金を入れておけば、住宅ローン金利がゼロ!という夢のようなプランも実現可能でした。ちなみに、3000万円の住宅ローンを年利1.0%で35年で組んだ場合の総金利額は約556万円です。これをゼロにすることが出来たのです。
預金連動型住宅ローンは東京スター銀行が国内初
預金連動型住宅ローンは、2003年2月より東京スター銀行が日本国内で初提供した商品です。提供当初は預金残高分の金利がゼロ、団信保険料も割安(住宅ローン残高に対して0.2%程度)で、かつ住宅ローン控除がローン残高分の上限まで適用出来るという現金を持っている人には夢のような商品でした。中小企業の社長などは事業用の資金を住宅ローン口座に預け入れておき、金利ゼロの住宅ローンを実現していた人もいました。
2003年提供当初のプレスリリース資料
https://www.tokyostarbank.co.jp/profile/pdf/030203.pdf
提供から当初はかなり契約を伸ばしていたようでしたが、スター銀行本体の売却や、他行の住宅ローンの金利低下など市場環境変化もあり、2014年4月から新規募集が停止となりました。
その後、2016年7月に商品内容が見直しされた上で復活し、現在に至るというわけです。復活当初は、ローン残高の7割までしか預金連動しなくなったため、預金がいくらあってもローン残高の3割には金利が掛かっていたようです。
2016年復活時のプレスリリース資料
https://www.tokyostarbank.co.jp/profile/pdf/160719.pdf
2019年現在では預金連動の上限であった7割が撤廃されたようで、ローン残高全額に対して預金連動出来る模様です。いつ変更になったかは調べることが出来ませんでしたが、2018年12月時点では撤廃されていた模様です。
2019年7月現在の商品説明資料
https://www.tokyostarbank.co.jp/products/loan/homeloan_starone/pdf/som_pamphlet.pdf?181210
現在の預金連動型住宅ローン
提供当初と比較すると、2019年7月現在では上記の東京スター銀行が提供する預金連動型住宅ローンは、かなり条件が悪くなっています。というより、昔が良すぎたのでしょうね。。※上記のリンクから情報を抜粋して記載しています
2003年(提供当初) | 2019年(現在) | |
金利 |
変動金利 3%以上 |
変動金利 0.45% ~ 1.25% |
保証料 | 不要 | 不要 |
団信保険料(死亡or高度障害時) | 年利0.21% |
年利0.504% ※メンテナンスパック1 |
団信保険料(ガン特約付き) | 年利0.45% |
年利0.702% ※メンテナンスパック2 |
金利ゼロとなる預金額上限 | 住宅ローン残高の100% | 住宅ローン残高の100% |
事務手数料 | 70000円 | 融資額の2.16% |
提供当初の条件であれば、住宅ローン残高と同額の普通預金があれば、団信保険料の年0.21%のみでの住宅ローンが可能でした。
現在の商品では金利が大幅に下がった反面、団信保険料と事務手数料が大幅に上がっています。特にメンテナンスパックがあるために、住宅ローン残高全額分の預金があったとしても必ず0.504%の金利が掛かってくるということになります。これではネット銀行の住宅ローンと比較すると見劣りしてしまいます。
ネット銀行との比較
2019年7月時点で最低の変動金利を提供している「住信SBIネット銀行」の住宅ローンと比較してみました。
スター銀行 預金連動型住宅ローン |
住宅ローン |
|
金利 |
変動金利 0.45% ~ 1.25% |
変動金利 0.418% |
保証料 | 不要 | 不要 |
団信保険料 |
年利0.702% 死亡&高度障害 ガン特約付き |
無し 3代疾病 慢性疾患など、働けなくなった場合も適用 |
金利ゼロとなる預金額上限 | 住宅ローン残高の100% | - |
事務手数料 | 融資額の2.16% | 融資額の2.16% |
事務手数料は変わりませんが、変動金利では0.32%程度負けています(スター銀行の団信保険料とSBIネット銀行の変動金利を比較しています)。
さらに、団信の適用範囲も大きく及びません。預金が減ってしまうと金利上昇となるリスクもあることを考えると、(2019年7月時点では)スター銀行の預金連動型住宅ローンには魅力は無いように見えます。
住信SBIネット銀行住宅ローンの商品概要資料(2019年7月現在)
https://www.netbk.co.jp/contents/resources/pdf/gaiyo_hl_smtb.pdf
他の金融機関の預金連動型住宅ローンは?
2019年現在、スター銀行以外にも預金連動型住宅ローンを提供している金融機関もあります。こちらはどうでしょうか?ネットで探せる範囲で調べてみました。
関西みらい銀行
住宅ローン残高の50%までしか預金連動しない。ローン残高50%には金利1.0%が適用されるため、メリット小。
西武信用金庫
ローン残高に対する上限の記載は見当たらない。事務手数料が安い(3万2400円)のは特徴的。口座管理手数料が年0.35%が掛かるので完全に金利ゼロとはいかないが、仮にローン残高100%に対して預金連動するのであれば最も安い金利と出来る可能性がある。ただし、HP上に団信に関する記載が無いなど、情報量が不十分のため金融機関としての信頼性に欠けると感じます。
山陰合同銀行
住宅ローン残高の50%までしか預金連動しない。ローン残高50%には金利1.0~1.2%が適用される。さらに11年目以降は金利が倍近くに上昇するため、メリット小。
北日本銀行
住宅ローン残高に対する上限の記載はないため、100%まで預金連動可能か?預金残高を超える分については、普通預金金利が適用されるという変わり種の預金連動型。団信加入は別途年利0.5~0.75%が必要となるため、メリット小。
ざっと調べられる範囲で調べてみました。現在の低金利の状況下では預金連動型住宅ローンにメリットは無さそうです。地銀や信金で他に提供している金融機関があるかもしれませんね。中には夢のような条件の商品もあるかも・・?
最後に
預金連動型に限らず、住宅ローンの内容は変動が激しいです。実際に借り入れを行う際には、必ず個人でよく調べた上で、金融機関に直接確認して下さい。
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